職業訓練ツールを、ダンボールで作ってみた

オーダンボールの運営会社である、矢野紙器では、「就職したい」という想いをもつ障がいのある方に向け、様々な業務を通じて就職に必要な能力や、知識をつけるための職業訓練の事業を行っています。

そこでは矢野紙器の特色を生かした、「ダンボールを使った職業訓練」を行っているわけですが、
そもそも「ダンボールを使った職業訓練って一体なんだろう」と、思った方も多いのではないでしょうか。
今回はそのダンボールを使った職業訓練ツールをご紹介します。

職業訓練ツールとは

訓練ツールを御社では、【作業を正確に進めるためのサポート道具】と位置づけています。

この道具を使用する事で、次のようなメリットが得られます。

  • 1人では出来なかった事が支援員のサポートがなくともできるようになる
  • 作業短縮化かつ効率化になる
  • 「出来る作業」が増えるため、新たな能力開発に繋がる
  • 今まで出来なかった動作や、身体の使い方ができるためリハビリ効果も期待できる

様々なメリットがあるのですが、実はツールがあることで、障がいがあるなしに関わらず、誰が使っても作業の効率化が出来るため、一般的な作業にも活用する事ができます。

ツールが必要な人

ツールは効率的にミスを減らしながら作業を進めたい人すべてに必要な道具になります。
特に、支援者のサポートが必要な人や、身体的に出来る作業工程が限られてしまっている人にとって重要な存在となります。

ツールを活用した事によるメリット


実際に職業訓練ツールを活用した際ミスが減り、作業にかかっていた時間が大幅に減り作業効率があがりました。
また支援員が何度も確認していた作業や、付添でしか出来なかった作業作業が減る事で、支援員の負担が減り、様々なメリットが生まれました。

このような、大いに活躍が期待出来る職業訓練ツールの一部をご紹介します。

職業訓練ツール紹介

・差し込むだけで簡単シール貼り
シール貼りの業務では、貼り間違えやズレがあると不良品になることが多く、また貼る向きも分かりずらいことから、設計専門に相談しこちらのツールを作成しました。

Before
貼る場所が分からず、何回もシールを触って不良品にしてしまう、ズレが多く生じたりと、不良品が多く出ていました。
修正にも時間が多くかかってしまうため、ツール作りを依頼しました。

After
ツールを使用することにより、目で見て分かる補助が出来たため、貼りミスや、ずれなどなくなりました。
また、ツールなしではシール貼りが出来なかった手がつい震えてしまうひとなども、ツールを使用することにより、一人でもシール貼りの作業が可能となりました。
何度もシールを触ってしまう、シールを左右逆、上下逆に張ってしまうなどのミス無くす事が出来ました。

・もうミスしない!置くだけで簡単に数が数えられるダンボール板

ピッキングなど、決まった数を入れないといけない作業品というのは沢山あります。

多くても少なくても企業への信頼、商品の価値が落ちてしまう気の抜けない作業。そちらを解決しました。

Before

「Aには5個」「Bには8個」という指示だけでは、作業をするひとの集中力や記憶力頼みになり、どこかでミスが起きてしまうものです。

出来上がった時、仕上がりの数と、残りの数が合わないため支援員が再度検品ということがよく起きていました。

After

ダンボール板に指定の数字を書き、置くだけのとてもシンプルなツールを製作

数を数えるのが苦手な人でも、置くだけで簡単に数を数える事ができます。

過不足を視覚的に確認する事が出来るため本人だけでなく、周りもミスに気付きやすくなる、というメリットもあります。

今回紹介したのは、板だけでしたが、マス目になっていたり、商品の形のままくり抜かれていたり、応用範囲の広いツールになります。


・やってて楽しいい!回すだけで長さが図れる計測ツール

5メートルの長さを測り、そのテープを台紙に巻き取るという仕事がありました。非常にシンプルかつミスも起きにくいだろうと思えたのですが、「5メートルを測る」というのは想像以上に長く、またそれをズレずに綺麗に巻き取るというのは、困難を極めました。

Before
最初に行ったのは、「5メートル先まで手で引っ張る」という体力勝負の測定方法。
まずは広いスペースが必要で、効率も悪く、長さにばらつきがあり、一日にできる数も100個程度でした。
次に試したのは、1メートルの定規を作り、2回転半巻き取り、5メートルを測る方法でした。
こちらもテーブルの上でやるには場所を取りますし、巻いている間に数を忘れてしまったり、また定規に巻いたものを、再度解く必要があるため、不良品が出やすく、後の検品に時間がかかりました。
せっかく測定出来ても商品として巻き取る作業は、最初にやった工程と変わらず、生産性は上がりませんでした。

After
「場所を取る」「数えやすくする」「早くする」を解決するため、手元だけの操作で「計測」と「巻き取りを」同時にできるツールを開発出来ないかと設計部分に掛け合って完成したのが、写真の職業訓練ツールです。
ハンドルを、5周回すだけで5メートルが計測され、同時に巻き取りも完了するというものです。
作業者は回す事だけに集中すればよく、「計測」と「巻き取り」が一人で完結することで、1日に500個近く作る事ができるようになりました。
また、巻き取りは、手で巻くよりも正確に巻けるため、品質も格段にこうじょうしました。

実際に使ってみた感想

「スタッフによる回すだけで長さが図れるツールを実際に使ってみた感想」

ツールを活用することにより、業務説明にかかる時間や検品の時間短縮にも繋がりました。また付きっきりで作業ミスがないか確認することもなくなったため、不器用でも作業ができるといった、目に見えてわかる成功体験にも繋がるため、作業説明も非常にしやすくなりました。

「利用者さんによる回すだけで長さが図れるツールを実際に使ってみた感想」
「指先だけで大きな歯車を回すのではなく、腕の付け根(肩甲骨)からうで全体を使い、回すことが腕や肩を動かすリハビリには良いと感じました。その作業を行うことにより、肩甲骨も動かせ、血流も良くなっていると感じました。また腕を伸ばし腕の付け根から、回すことを続けていると肩甲骨の間(大堆)が温かくなり、次第に体全体が温かくなる間隔が感じられました」

まとめ

作業効率の向上、生産性の向上、ミスの減少、作業時間の短縮など、様々なメリットがありますが、本来この事業所の目的は、冒頭にあった「就職したい」という想いを叶えるということです。
そのために、本人の能力向上させたり、より長所を伸ばしたりするために時間を使えるようにすることが、このツールの最大の目的です。
生産性だけの追求が目的ではなく、本来の目標を達成するために、こうした職業訓練ツールがあることが望ましく、それは人や環境、そして作業に応じて、変化し続けます。
だからこそ、ダンボールという加工性に富んだ素材こそ、実現可能だと考えます。

訓練ツールのオーダー方法

具体的に設計図などなくとも、まずはイメージだけでも可能です。
今やっている作業をより簡単にしたい、こんな支援がしてみたい、などありましたら、是非ご相談ください。
ツール作りには福祉スタッフや設計専門スタッフが全力でお手伝いさせて頂きます。
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